写真家・七咲友梨さんが
お茶を通して運ぶ幸福の輪
<後編>

写真家・七咲友梨さんが
お茶を通して運ぶ幸福の輪
<後編>

2020.01.10

個性豊かな野草茶から見える人間模様

写真家の七咲友梨さんが2017年に立ち上げた日本茶ブランドsotto chakka(ソットチャッカ)は、島根県の吉賀町柿木村で日常的に飲まれているお茶を、各地でのイベントなどを通して今まで知ることがなかった人々に広める活動をしている。

後編では、自然豊かな柿木村で採れる野草をブレンドして作られているsotto chakkaの野草茶に注目。

sotto chakkaの野草茶にブレンドされている野草は、例えば、ドクダミ、クマザサ、桑の葉、柿の葉、カラスノエンドウ、スギナ、ヨモギなどがある。七咲さんのお母さんやご近所のおばあさんにも教わりながら試行錯誤の末に現在の7種ブレンドになったのだそうだ(今後もブレンドは変化していく予定)。その他にも、sotto chakkaではヨモギ&カキドオシなどがラインナップされている。自然に生えている野草のお茶とはどのような味わいなのだろうか。今回は野草9種類をお持ちいただき、それぞれの味や香りの特徴を伺った。


(上段手前から)ドクダミ、桑の葉、カラスノエンドウ、柿の葉、母子草
(下段手前から)クマザサ、スギナ、ヨモギ、カキドオシ

—ドクダミはお茶に使われているのを聞いたことがあります。

ドクダミは香りがきついこともあり、癖がある野草なのですが、実はこれが入ることでお茶が全体的に華やかになるんです。熱すると甘みが出てきます。たまに「りんごが入ってるの?」って言われることもあるんですけど、実はドクダミの風味なんです。

—母子草は、別名ゴギョウとも呼ばれる春の七草の一つですよね。

そうですね。黄色い花が咲く、すごく可愛らしい野草です。お茶にすると真っ黄色になって色も楽しめますが、味は割とあっさりしています。私は、他の野草とブレンドして楽しむことが多いですね。ヨモギもご存知の方が多いのではないでしょうか。成長が進むとえぐみが出てきてしまう葉っぱなので、sotto chakkaでは新芽で葉が柔らかい時期のものを使っています。飲むと体が温かくなると言われています。

—笹などもブレンドに入っているんですね。

私が野草に興味を持ったのはこのクマザサでした。山で仕事をする方が自生しているクマザサを炙ってお茶にすると聞いてから、「どんな味がするんだろう」と気になって。クマザサを加えると水が柔らかくなって、味も甘くなるんです。時間がたつにつれて香りもまろやかになります。


Photo by Yuri Nanasaki

―これらの野草はほとんど山奥で自生しているものなのでしょうか。

山だけでなく身近に生えているものもありますよ。ただ、摘む場所には気をつけていて、多種多様な植物が生える里山に育っているものを選んでいます。実はカラスノエンドウなどは道端にもよく生えていて、子供の頃によく実の部分で笛を作り、口でピーピー鳴らしていました。ただ、道端の排気ガスがかかったりしているものは飲まない方がいいとは思います。

―普段から慣れ親しんでいた野草がお茶になるとまた別の表情が見えてくるのは面白いですね。

そうですね。農家の方を悩ませる雑草のスギナはお茶にしてみると実は美味しく、体にとてもいいというところが魅力的ですし、カキドオシという野草は飲むとミントのような爽涼感がある。柿の葉や桑の葉は果実のような香りが特徴です。

これらの野草は、単体で飲む人もいれば、釜炒り茶に混ぜて飲んだり、気分や体調に合わせた組み合わせで飲む人もいる。七咲さんにオススメの組み合わせを聞いてみると「私は香りや味を楽しみながら飲んでいるのですが、最近は癖の強い野草同士を合わせるのが好きで、『カキドオシとヨモギ』や『カキドオシとドクダミ』などの組み合わせでよく飲みます」とのこと。

そして、「野草茶のブレンドってすごく面白いんですけど…」と興奮気味に七咲さんは続ける。

「美味しいブレンドを作ろうとして、うまい具合にバランスを取ろうとすると、なんの個性もない、味気ないものになってしまうんです。でも、そこにドクダミやヨモギなど、少し癖の強いものを入れると全体的にそれぞれの野草が引き立て合うんですよね。いわゆる『嫌われ者』が、他のものを伸びやかにさせるというのは発見でした。人間社会に置き換えて考えてみると面白くないですか?」

写真家になる前は、役者として活動していた七咲さん。芝居とポートレート写真の共通点に面白みを感じて本格的に写真に夢中になっていったのだという。役者から写真家、そして今はお茶にも関わる七咲さんは、常に「人間そのものと、コミュニケーション」に対して興味を持ってきたのだそうだ。

「セリフを言うだけが芝居ではなく、セリフのない場面でも相手役とのやり取りは続いています。それは言葉のないコミュニケーションですが、写真にも共通する部分があるんです。特にポートレートは被写体とのコミュニケーションがカメラに映ります。それが可視化できることに面白さを感じました」


Photo by Yuri Nanasaki

近所のおばあさんたちと一緒にお茶摘みやお茶づくりを行なうこともある七咲さん。自然の恵みだけではなく、異なる時代や場所に生きながらもわかりあえるという幸せな時間も感じることができるようだ。「お茶摘みをしている時って、初夏の青空の下、単純作業をしながらなので普段話さないようなこともつい話せてしまうんですよね。近所のおばあちゃんたちと三世代にわたる恋愛話になったりもします。お茶づくりから生まれるコミュニケーションも面白いですよ」


Photo by Yuri Nanasaki

お茶がつくられる土地からお茶が飲まれる土地まで、さまざまな人間模様が日々紡がれている。個性豊かな口当たりで、体を芯から温めてくれるsotto chakkaのお茶は、ひとりひとりの個性やコミュニケーションを大事にしている七咲さん、そして携わる様々な人の幸せが詰まっているからこその味わいなのかもしれない。


【七咲友梨】
島根県出身。写真家であり、2017年から日本茶ブランドsotto chakkaを手がける。リアリズム演技を学び、役者として映画、ドラマ、舞台、CMなどで活動。その後、写真家・横木安良夫氏に師事し、独立。ポートレイトを中心に雑誌、広告、書籍などの分野で活動。写真集、写真展など作品発表も精力的に行なっている。sotto chakkaでは「おすそ分け」の精神を大事にしながら、お茶の魅力を広げている。
www.instagram.com/nanasaki_yuri/ (七咲友梨さん Instagram)
www.instagram.com/sotto_chakka/ (sotto chakka Instagram)

Photo: Yoshimi Kikuchi|Text: Ririko Sasabuchi

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