山梨・甲州にある、菓子研究家・長田佳子さんのアトリエにお邪魔して、お菓子とお茶をいただく。
まさに“口福”だった、前回のヴィクトリアサンドイッチケーキと紅茶 の組み合わせにつづいて今回は、懐かしい味わいの玄米茶に合わせるオートミールクッキーを教えていただいた。米粉と米油を使ったクッキーで体にやさしい、長田さんらしいお菓子だ。作り方ももちろん教えていただいたので、こちらもぜひご家庭でお試しいただきたい。
食べることによる癒し 「フードレメディー」の考え方
「レメディー(remedy)」とは、「治療薬」や「手当て」といった意味の英語。長田さんが屋号としている「foodremedies(フードレメディー)」には、食べ物が癒しになってほしいという思いが込められている。お菓子づくりを専門とする長田さんにとって、それは「ヘルシー」であることだけではなく、「心も満たされる」ということが大切なようだ。
「お菓子というものはどうしてもお砂糖を使うことが多いですので、誰にとっても健康なものとは言い切れない。ですが、お菓子を食べたら気持ちが緩んだり、癒されるということは誰にとってもあるはず。そういう意味で、こういうお菓子なら体も楽でいいなぁと感じていただけるものをご提案して、それを役立てていただけたらと思っています。もちろん素材に気を配ったり、ハーブやスパイスを使ってお砂糖以外で味をつくるという具体例はありますが、それよりも、なんとなく気持ちが元気になるなぁと感じることが大事だと思っています」
今回教えていただいたオートミールのクッキーは、まさにヘルシーかつ満足感のあるお菓子。その味わいのアクセントになっているのはカルダモンだ。
このカルダモンというスパイス、長田さんはお菓子だけではなくお茶にひと粒入れて飲むと美味しいことに最近気がついたのだそう。
「昨年、私たちの畑のそばに茶の木がたくさんあることに気がついたんです。ご近所の方の話によると、渡り鳥が勝手に運んできたもので、もう誰も手入れをしていない。そこで、野生の木からどんなお茶の味がするのか、見よう見まねで摘んで炒ってみたらとても上品なおいしいお茶ができました。そして友人からお茶の楽しみ方のひとつとして、カルダモンを入れるとスパイシーになっておいしいと教わり、試してみたらオリジナルのお茶ができたようで感動しました」
その再現がしたくなって、少し寄り道。VAISAの「山のお茶」に、カルダモンをひと粒分入れてみる。
カルダモンはナイフで緑色のサヤの部分を切り、中の種の部分を刻む。ティーバッグと一緒にお湯の中へ。「お湯を先に入れてからティーバッグを入れた方がいい」のだそう
注いだ瞬間にカルダモンがふんわり香ってくる。
少し渋めの煎茶の味わいから、スーッとしたカルダモンの香りが上ってくるのは新鮮。
「少し体がポッとする感じがありますね」と長田さん。寒い日にも暑い日にも合いそうな、体をちょうどいいところに導いてくれそうな感覚。みなさんはどう感じるだろうか。ぜひ試してみていただきたい。
米粉と米油を使ったオートミールクッキーを [岡野園]の抹茶入り玄米茶と一緒に
こんがりと美味しそうな焼き色のクッキーは、オートミールと米粉がメインで、サクッと軽い仕上がり。カルダモン、オレンジピール、塩がアクセントで、これがまたお茶とよく合う。
米粉を使うと「満足感がある」から、砂糖で味のボリュームを大きくせずに楽しめる。結果としてヘルシーになるし、食べていて飽きがこない。
抹茶入り玄米茶は、CHAGOCORO SHOPから長田さんがセレクトしてくれたお茶。
「満足感のある味だと思いました。食事の際は薄く淹れて、お菓子と合わせる際はお抹茶を意識して少し濃い目に淹れる。こんなふうに、自分でおいしさを加減することのできるお茶ってそう多くはないように思います。お菓子は他にもチョコレートやキャラメル味なども試してみましたが、どれも合って。抹茶と玄米がブレンドされていることによって幅広い味に合わせられるのだろうなと感じました」
お菓子と合わせることでお茶の新たな一面に出合える。後編ではオートミールクッキーの作り方をご紹介するので、ぜひお見逃しなく。
長田佳子|Kako Osada 菓子研究家。フランス菓子店、オーガニックレストラン等で10年勤務ののち、2015年に「foodremedies(フードレメディ)」を立ち上げる。お菓子づくりのレッスン(現在はオンラインが中心)や、各地の食材を活かした商品開発などを行う。レメディには“癒し”や“治療する”という意味があり、ハーブやスパイスなどを組み合わせながら体にも心にも嬉しいお菓子づくりが人気を集める。foodremedies.jp instagram.com/foodremedies.caco
Photo: Hatta Masaharu Text: Yoshiki Tatezaki