• UAさんが冗談抜きで夢中な「お茶」の話<前編>
    楽曲裏話と、忘我の瞬間につながるお茶の存在

    SCROLL

    文化をインスパイアするお茶メディア「CHAGOCORO」の特別企画にご登場いただくのは、アーティスト・UAさん。デビュー翌年に発表した「情熱」をはじめとした代表曲は今なお色褪せぬ名曲として世代を超えて聴き継がれ、さらに最新EP『Are U Romantic?』ではUAさんが思う“今のポップ”を表現し、幅広いリスナーから熱い支持を集めている。

    EPから先行リリースされた「微熱」は、独自のスタンスで人気を集めるパンクバンド・GEZANのフロントマンであるマヒトゥ・ザ・ピーポー氏が作詞作曲を手掛けた楽曲。ファンの間では「情熱」へのオマージュではと興奮を呼び、圧倒的なクオリティはリスナーの“UA熱“を一気に押し上げた。マヒトゥ・ザ・ピーポー氏が手掛けたMVも圧巻、必見だ。

    そして5月25日にリリースされた『Are U Romantic?』は全6曲。マヒトゥ・ザ・ピーポー氏の他にも、ハナレグミの永積崇氏、くるりの岸田繁氏、Dragon AshのKj氏、NulbarichのJQ氏、中村佳穂さんといった錚々たるミュージシャンが参加しており、個性豊かな楽曲を表現しきるUAさんのシンガーとしての魅力を存分に味わえる。

    中でも個性的な楽曲が「お茶」だろう。

    「お茶」という言葉がここまで衝撃を持って受け取られたことがあるだろうか?
    英語表記でも「Ocha」というストレートな楽曲はいかにして生まれたのか?
    お茶はUAさんの暮らしの中でどのような存在なのか?
    UAさんはどのようなお茶に刺激を受けるのか?

    今回、UAさんにインタビューを行うとともに、日本茶の飲み比べとUAさんによるブレンド茶にトライしていただいた。

    “人としてロマンティックに日常を過ごしていきたい”

    「お茶」の作曲はハナレグミの永積崇氏。UAさんは作詞を担当した。プライベートでも仲がよいという二人によるコラボレーションのテーマは「日常」だったという。

    UA 自分は今まで祈りなどをテーマにすることが多く、日常生活を歌うことが少なかったんです。でも今回の作品は、自分の中で「ポップ」というのがお題でした。崇くんとの楽曲のイメージも、より等身大で、日常の延長というような曲を目指しているんだっていう話をしたら共感してくれて。それで、崇くんからもらったデモに仮で付いていたタイトルが「お茶漬け」だったんです。本人に確認はしていないのですが、日常などの話を受けて付けてくれたのかな、は〜、さすがだなぁと思いました。ただ、「お茶漬け」だとそこまでストーリーに落とし込めなくて……ちょっと人生未熟だったみたいです。それで「お茶」ということにさせてもらったのですが、結果的に自分の中ですごくイメージが膨らんだんです。

    永積氏からの「お茶漬け」というこの上なく日常なワードとのびやかなメロディーを受けて、UAさん側でアレンジを行い、ネオポップな「お茶」が仕上がった。その絶妙なアレンジの裏には「ロマンティック」というアルバムタイトルにも含まれるキーワードがあった。

    UA アレンジはガラっと変えたので、崇くんもものすごく喜んでくれました。人間って、現実の中だけで生きていくことができない生き物だと思っていて。それは虚構だと呼んでしまったら悲しいですけど、ストーリー、物語というものは人間にとってやっぱり必要。アルバムのタイトルにもあるように、人間というのはロマンティックな生き物だと思うんです。ロマンティックだからこそ、こうして発展を遂げて、文化も栄えるわけなので。なので、私の言うところの日常というのは、決して、リアリスティックだということではなくて、人としてロマンティックに日常を過ごしていきたいという意味があります。お茶っていうのは、その考え方にすごく合うアイテムだと思うんですよね。

    今を生きる私たちに「あなたはロマンティックに生きてる?」と問いかけ、そのメッセージが楽曲を通してしっかり浸透する新作を生み出したUAさんの感覚にはさすがと言うしかない。

    リアルな情報がノンストップで流れ続ける現代。「そこでお茶」というサビの歌詞が響く理由がわかった気がした。

    そこでお茶 コーヒーより渋いカフェイン
    冗談抜きで夢中なの

    You know why I can’t stop tuning in to you like a tea caffeine
    ズルくない?そのTaste & Smack
    I won’t mean 冗談
    真実はひとつだけじゃない
    (「お茶」より歌詞抜粋)

    “お茶を飲む時間というのは、自分を愛でる時間”

    この1〜2年の間に、緑茶、ほうじ茶、番茶といった日本茶に傾倒していると話すUAさん。実際の暮らしでもお茶をよく飲むそうで、この日の朝もお気に入りのほうじ茶を飲んできたそう。

    UA お茶に傾倒するのが遅いくらいと思うんですけど、お茶ってこんなに深い世界なのかって驚いているんですよ。ちょっと前から大好きだったコーヒーを止めてお茶を飲むようになって、「お茶」という歌もできて。「コーヒーより〜」なんて歌の中で書いて、あれは冗談ですけど、歌詞というのはやはり虚構ではありますけど、自分の人生にかかってきちゃうっていうか、そんな実感はあります。今カナダで生活をしているのですが、やはり東京にいる時の時間軸は全く違う。気がつくとシステムだったり時間の中に組み込まれている。もちろん自分は歌手という職業を自ら選んで、そこにジョインしているわけですけど、ふと“自分である”ということが希薄になる瞬間がある。資本主義とか何かの世界の中に存在している自分っていうのとは別に、“世界から出ている”瞬間というのは必要だと思っていて。でもそれは、頭の中で“出よう”としてもなかなか難しい。ちょっとした決め事を持ったりして、それを思い出す訓練のようなものが人には意外と必要なんだなってこの歳になってわかってきて。それで、お茶を飲む時間というのは、自分を愛でる時間でもあるんです。これだけ豊かなバラエティがある中で、それを選ぶ自分もまた見つめて。農薬を使っている使っていないとか、色々な地球とのつながりも考える中で、お茶に触れることで地球を思い出す。ちょっと大袈裟かもわからないですけど、ひとつ頭の中の世界から逸脱するという行為につながるんじゃないかと思っています。お茶を自分のためだけに淹れてあげて、目を瞑って味を感じる時に、何というか……忘我の瞬間というか、そういうことを感じます。元々お茶というのは禅的な世界から伝わったものだろうと思いますし、茶室という場所もそういう場所ですし。呼吸を整えるということだと思います。すごくフレンドリーな存在にも関わらず、文化的にも歴史的にも、そして精神的にも、いろんな角度で感じていける存在ですよね。

    「冗談抜きで夢中なの」という言葉は本当に違いないと感じさせるほど、お茶と本質的なつながりを体感しているUAさん。お話は後編につづきます。

    後編では熊本県でお茶を生産する[お茶の富澤。]の富澤さんのお茶をUAさんに飲み比べていただき、オリジナルブレンドにも挑戦していただきました。

    UA|ウーア
    歌手。UAとは、スワヒリ語で「花」という意味を持つ言葉。大阪府出身。1995年にデビューし、当時からその個性的なルックスと存在感のある歌声で注目を集める。「情熱」「悲しみジョニー」「ミルクティー」等、数多のヒット曲を持つ日本を代表する女性シンガー。2020年でデビュー25周年。ボーカリストとして様々なアーティストの楽曲にも参加している。また映画においても、初主演を果たした『水の女』(2002)や『大日本人』(2007)、『eatrip』(2009)にも出演する。そんな幅広い活動と並行し、2005年より都会を離れ、田舎で農的暮らしを実践中で、現在はカナダを拠点に生活している。今年5月25日、約6年ぶりとなるEP『Are U Romantic?』を発表。豪華アーティストとの共作を通じて、2022年現在のポップ=ネオポップを表現した作品となっている。11月には『Are U Romantic?』東名阪ツアーを予定している(詳細はオフィシャルサイトにて)。
    オフィシャルサイト
    『Are U Romantic?』作品ページ(購入・ストリーミング)
    instagram.com/ua_japonesiansinger_official
    twitter.com/UA__KA

    富澤堅仁|Kenji Tomizawa
    熊本県上益城郡益城町で栽培・製茶・販売を行なう[お茶の富澤。]の4代目。震災後は地域に残る唯一の茶園となったが、意欲的な茶葉づくりで全国に熊本のお茶の魅力を発信している。
    ochanotomizawa.co.jp

    Photo: Masayuki Shimizu
    Styling: Kumiko Iijima (POTESALA)
    Kimono dressing: Mitsue Niino (Asami Kimono)
    Hair: Miho Matsuura
    Maku-up: COCO
    Text & Edit: Yoshiki Tatezaki
    Produce: Kenichi Kakuno & Keisuke Mizuno
    Coordination: Emiko Izawa
    Special Thanks: Kenji & Chiharu Tomizawa (Ocha no Tomizawa)

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