良質のお茶で味わうocha room ashita ITO ENの抹茶ビール
2019.12.03 日本茶、再発見
- 抹茶
- 東京
チョコレート、コーヒー、ケーキにアイスクリーム……抹茶フレーヴァー商品の人気はますます高まるばかりで、海外からも“matcha”に熱い視線が注がれている。いつでもどこでも楽しめるようになってきている抹茶にも実は旬があることをご存知だろうか。抹茶も煎茶と同じくお茶の木から摘まれるお茶の葉からできている。特徴のひとつは「かぶせ」といわれる栽培方法で、これはお茶の木を幕(ヨシズやワラ)で覆い日光を遮るというもの。かぶせによって、テアニン(旨みの成分)からカテキン(渋みの成分)への変化が抑えられ、結果として旨みが豊富なお茶となる。こうして育てられたお茶の葉を蒸すと「碾茶」と呼ばれる抹茶の原料ができる。碾茶を挽けば抹茶のできあがりと思いきや、実は挽くまでに約半年間も茶壺に入れて熟成する必要があるのだ。涼しい場所で半年保管された茶壺の封を切るのは毎年11月で、茶壺を開ける儀式は「口切(くちきり)」と呼ばれる。つまり先頃、「お茶のお正月」とも呼ばれる、抹茶の旬を迎えたということだ。
スイーツだけではなくアルコールドリンクにも用いられ、様々な風味との組み合わせの可能性が広がっている抹茶。今回から3回に渡って、抹茶をカクテルとして使い国内外の食通を唸らせる名店や、抹茶の新しい飲み方を試みる注目店を紹介していく。
[カンテサンス]岸田周三氏、[ブルギニオン]菊地美升氏などフレンチシェフのもとで修行をした川手寛康氏の[フロリーレージュ]は予約2ヶ月待ちという人気店。通常16名が座る大きなコの字型のカウンターの内側で調理シーンが繰り広げられ、目の前で仕上がった料理がそれぞれの卓上に運ばれてくるというライブ感溢れるこの店には、国内外から食通が足繁く通う。
日本の食材がふんだんに使われた11品のコース料理に合わせたカクテルペアリングを行なうバーテンダーの大場文武さんに、今回特別に3種類の抹茶カクテルを披露していただいた。
まずは食前酒としてさっぱり飲むことができる一杯。柑橘のベルガモットで香り付けしたウォッカをベースに抹茶を合わせ、ソーダでトップする。ベルガモットのほのかな甘みと酸味に、抹茶の香ばしさと甘みがマッチしてとても飲みやすい一杯。「海外の人はジントニックを食前に飲んだりしますが、そのようなイメージですね」と大場さん。ペアリングを前提に料理を邪魔せず、度数を下げたりノンアルコールでもつくることができるのだという。
使用するのはオーガニックの抹茶パウダーを製造し世界で広めているNODOKAというブランドのもの。ところで、お茶をいれて飲んだ時、飲んでいるのはお茶の成分の約3割程度で、あとの約7割は茶葉に残されたままになってしまうといわれる。その点、抹茶は茶葉を丸ごと粉にしているため、お茶の成分を余すことなくいただくことができる。丸ごといただくにあたって無農薬有機栽培であるということは重要で、NODOKAは「素晴らしい活動だと思う」と大場さんは称賛し、「混ぜるだけで簡単にとける」という使いやすさもスピードと高いクオリティを求められる仕事場で重宝する理由とのことだ。
続いては山椒で香り付けしたウォッカに特選抹茶、卵白を加えてシェイク、柚子の香りを加えたカクテル。卵白、山椒、柚子で複雑になる味わいとのベストバランスを実現させるために、旨みがより強い特選抹茶を使う。旨み、酸味、山椒のスパイシーさが味わえる一杯で、魚介料理と合わせる。ローストした魚の味わいと付け合わせの柑橘の香りに寄り添いながら、とろりとしたテクスチャーのカクテルをするりと口に含むイメージ。山で育てられるお茶が海の料理と合うと考えると興味深い。
「お茶には少し昆布のような独特の旨みがありますね」と語る大場さん。バーでの研鑚はもちろんだが、表参道の日本茶専門店[櫻井焙茶研究所]で働いた経験を持ち、様々なお茶に触れてきたそうだ。お茶に対して人一倍熱い情熱を持っていることは話の節々に感じることができた。
最後は、ブルーベリー、フランボワーズ、ラズベリーという3種のベリーにココナッツクリーム、バニラ、そして抹茶を混ぜスムージー仕立てにした一杯。トッピングのミントが清涼感を与えながら、デザートドリンクとして楽しめる。バニラとココナッツの甘さに、ミックスベリーの果実味、そこに抹茶の甘苦さが加わり、香りまで美味しいスイーツのようだ。
フロリレージュでは再訪したお客に同じ料理は出さない。毎日変化するメニュー、そしてお客の好みに合わせてドリンクはつくられるのだという。海外へと発信の先を広げるにあたって、大場さんは温故知新の考え方がとても大切だと感じている。「日本茶は世界でも有名なので、それは強みですよね」世界中に広がりを見せる抹茶や日本茶の伝統を見つめ、その可能性を探求することで、新たな味覚体験が生まれてくる。
フロリレージュ
最も予約の取れないレストランのひとつといわれるモダンフレンチ。2015年に現在の外苑前に移転するとともに、コンセプトを再構築。日本の食材にこだわり、川手寛康シェフ独自のフレンチが生み出される。ディナーは11品のコースのみ。2018年にアジアベストレストラン第3位、ミシュラン二つ星獲得。
www.aoyama-florilege.jp
www.instagram.com/restaurant_florilege (Instagram)
Photo: Kenta Aminaka
Text: Yoshiki Tatezaki
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内容:フルセット(グラス3種、急須、茶漉し)
タイプ:茶器
内容:スリーブ×1種(素材 ポリエステル 100%)
タイプ:カスタムツール