Seiho
トラックメイカー/DJ
羊文学/ミュージシャン
人それぞれお茶それぞれの多様な「色」を感じることで、多様性の大切さを感じる特別企画。
自然の恵みと人の手によって育つお茶をひと口、目を瞑って、ひと呼吸。
香りや温度、重さや舌触り、空気との触れ合いを経て、目に見える以上の、
その人にとっての「お茶の色」が心に浮かぶ。
一人ひとりの感性によりそう、お茶の多様性。あなたにとって、お茶はどんな色ですか?
ロックバンド[羊文学]のギターボーカルとして全楽曲の作詞・作曲を務める傍ら、映画やドラマの劇伴制作、客演やCM歌唱など、個人でも多岐にわたり活動する、塩塚モエカさん。最近、音楽が大好きだという塩塚さんの先輩が日本茶のブランド「FETC 1892」を立ち上げたことがきっかけでお茶への関心も一気に高まっているのだそう。日々“音色”に向き合う塩塚さんにとって、お茶はどんな存在なのでしょうか。
「以前は喉を痛めてしまった時などにティーバッグのお茶を飲んで治そうとしたりしていたんですが、実は今まで意識的にお茶を飲んできたことはあまりなくて。先輩がはじめた『FETC 1892』のお茶を飲んでから、日本茶が気になる存在になりました。とろっとしているものだったり、お花の香りがするものだったり。自分が知っている“日本茶”とは明らかに違う。『FETC 1892』ではそのときの気分に合わせてお茶の産地や種類、組み合わせを選んでくれるんですが、茶葉ごとに風景が浮かぶ気がするんです。特に印象に残っているのは静岡県藤枝市の煎茶『FUJIEDAKAORI』。最近は音楽制作のために家で作業をすることも多いので、煮詰まってきたらお茶を淹れていて。緊急事態宣言もあってなかなか遠出はできないですが、行ったことがないその土地の風景が浮かぶ気がして、気分転換になっていますね」
小さい頃から緑が身近にあったという塩塚さんにとって、お茶を飲むと樹のパワーを感じるのだそうです。お茶を飲んで、それでも今日はもうダメだ、という日は散歩に出るのが日課。特にお気に入りのスポットは近所の神社や住宅街の並木道で、1時間ほどひたすら歩き続ける。歩いている時間は、お茶を飲んでいる時間に通ずるところもあるのだとか。
「歩くことも、樹に囲まれた場所も大好きなんです。歩くのも結構ゆっくりなので、運動というより景色を愉しんでいる感覚。今日はダメだ、という日はお昼くらいから歩いたりもするし、お買い物に行く時も1時間くらいかけて歩いたりもします。全部終わってから、よし歩きに行くか、と夜出歩くことも多いですね。樹のパワーを感じに行っている感じ。日本茶を飲むことも少し近い感覚があると思います。樹に囲まれた青々した景色が浮かぶ気がするんですよね。小さい頃から樹に囲まれて育ったので、そういった場所や景色を感じることには、本来の自分に帰るような特別さがあります」
お茶を飲んでいる時に心の中に浮かんだ音色は、音楽家・高木正勝さんの『かがやき』というアルバムの曲たち。
「村の人たちの歌声や子供たちの合唱、日本の民謡を思い起こさせるような懐かしい感じと、その人にしか奏でられない新しい感じが同居している音楽です。懐かしいんだけど新しさがあるところが、どこかお茶と似ているなと感じます。アルバム自体も絵本のような作りになっていて、人によっては音楽を聴きながら読むこともできるし、絵本だけ眺めることもできる。それぞれの楽しみ方で味わえるのが良いですよね。特におばあちゃんが歌う『かみしゃま』という曲が一番好きです」
「『植物は人の感情を読み取る』という研究をしている人がいると友人に聞いたことがあって。本当かどうかはわからないけれど、自分がすごく疲れていると、家の植物も元気がなくなるっていいますよね。お花もすぐに枯れてしまったり。なくても平気な人もいると思うけど、気がつかないだけで、私たちの辛さも吸い取ってくれているのかな、と思います」
なくても平気な人もいるけれど。身近なところで、気がつかずに浄化してくれている。塩塚さんの音楽にも、何か通ずるところを感じたお話。お茶も、植物も、そして塩塚さんの音楽も、控えめに、けれど一番身近なところで寄り添ってくれている存在なのかもしれません。
塩塚モエカ|Moeka Shiozuka
羊文学のギターボーカルとして全楽曲の作詞・作曲を務める。ソロでは羊文学とは異なる楽曲とアプローチで活動を行い、映画やドラマの劇伴制作、客演やCM歌唱など多岐にわたる活躍を見せているほか、そのアイコニックなキャラクターからファッション・カルチャーシーン等、音楽以外の多方面からも注目を集めている。
hitsujibungaku.info/
instagram.com/hiz_s/
Photography: Kisshomaru Shimamura
Text & Edit: Moe Nishiyama & Yoshiki Tatezaki
人それぞれお茶それぞれの多様な「色」を感じることで、
多様性の大切さを感じる特別企画。
自然の恵みと人の手によって育つお茶をひと口、
目を瞑って、ひと呼吸。
香りや温度、重さや舌触り、空気との触れ合いを経て、
目に見える以上の、
その人にとっての「お茶の色」が心に浮かぶ。
一人ひとりの感性によりそう、お茶の多様性。
あなたにとって、お茶はどんな色ですか?
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