Seiho
トラックメイカー/DJ
アーティスト
人それぞれお茶それぞれの多様な「色」を感じることで、多様性の大切さを感じる特別企画。
自然の恵みと人の手によって育つお茶をひと口、目を瞑って、ひと呼吸。
香りや温度、重さや舌触り、空気との触れ合いを経て、目に見える以上の、
その人にとっての「お茶の色」が心に浮かぶ。
一人ひとりの感性によりそう、お茶の多様性。あなたにとって、お茶はどんな色ですか?
書道をベースに現代的な表現を追求するアーティストとして、出身である沖縄県・宮古島を拠点に国内外で活躍する新城大地郎さん。墨で書かれる大地郎さんの作品には、時に平易な文字であったり人の形のようでありながらも、「これって何だ」と立ち止まらせるような引力があります。自身も「問いかけること」を大切にしていると話す大地郎とお茶の話を聞きました。
大地郎さんが持ってきてくれたお茶は、さんぴん茶。沖縄といえば、というお茶です。
「普段よく飲むさんぴん茶。ジャスミン茶のことです。麦茶は飲まなくて、冷やしたさんぴん茶ですね」
そう話す通り、沖縄ではお茶は冷やして飲むのが基本。冷蔵庫には麦茶ではなく、さんぴん茶というのも、その土地のお茶文化として面白い点に感じます。
しかし、あえて熱いお茶を飲むシチュエーションもあったと言います。
「それは、祖父のお寺の畳の間に上がって書を書くとき。池のある庭を向こうに見ながら、禅画が軸に飾ってあって花器に花が生けてあってという空間でお茶を飲んで好きな文字を書く」
テスト勉強も同じくお寺でやっていた記憶があるという大地郎さん。当時は決まって韃靼蕎麦茶に黒砂糖というセットだったそう。そういった経験もあり、現在でも自身のアトリエにゲストが訪れる際には、急須でさんぴん茶などを淹れてもてなすのが常になっているといいます。
「だから、本当のお茶の景色は、宮古の祖父のお寺ですね」
ただ、東京にも唯一、そのお寺の空気を感じさせるようなお気に入りの場所があるといいます。それが、駒場にある日本民藝館。
「大学4年生くらいの時に初めて来ました。いろんなミュージアムがありますが、ここは特別で。用の美といいますが、暮らしに根ざした品があって、思想や哲学よりも、人間の身体に沿って生まれたものだと感じていて。空間含めてそれぞれが邪魔をしない。物によっては何百年も昔のものがあって、建物自体も歴史ある場所ですが、そこに自分が入っても共感できる。そういった、時を超えるというような感覚は、やっぱり手技だからかなって思います」
「心のよりどころじゃないですけど、少し行けば渋谷の街という場所にあってオアシスのような空間で。日本人だからかもしれないですが、過去を辿れる場所。博物館ではなくて、暮らしの中のクラフトだから、いろんな“ソース”がある気がする。創る上での“源”が」
「晴れた日は、エントランスから陽の光が入る時間があって、大谷石の床に虹みたいに光るんです」というスポットにて、作品づくりで使う硯を撮影しました。
大地郎さんとお茶の関係を辿ると、原風景である宮古島のお寺、そして祖父の存在が見えてきました。最後に、大地郎さんの祖父のお茶の飲み方についても話してくれました。
「祖父は春夏秋冬、なぜか必ず氷をコップに入れて冷たいお茶を飲むんです。祖父の“哲学茶“っていっていいくらい。氷は固体で、解けると液体になりますよね。『これは水なのか、氷なのか』っていうことを常に問うているというか。祖父の中では、氷の入ったお茶を飲むということが、哲学をする上でのきっかけになっているというような。自分の中にそういうのがあるんだろうなぁ」
あらゆるものに問いを立てる。祖父のお茶の飲み方にまで染み付いたその姿勢は、大地郎さんにもたしかに受け継がれていると感じました。
新城大地郎|Daichiro Shinjo
1992年、沖縄県宮古島生まれ。現代的で型に縛られない自由なスタイルで、伝統的な書に新たな光を当てている。
daichiroshinjo.com
instagram.com/daichiro_
Photography: Kisshomaru Shimamura
Text & Edit: Moe Nishiyama & Yoshiki Tatezaki
人それぞれお茶それぞれの多様な「色」を感じることで、
多様性の大切さを感じる特別企画。
自然の恵みと人の手によって育つお茶をひと口、
目を瞑って、ひと呼吸。
香りや温度、重さや舌触り、空気との触れ合いを経て、
目に見える以上の、
その人にとっての「お茶の色」が心に浮かぶ。
一人ひとりの感性によりそう、お茶の多様性。
あなたにとって、お茶はどんな色ですか?
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