Seiho
トラックメイカー/DJ
TEA BUCKS
人それぞれお茶それぞれの多様な「色」を感じることで、多様性の大切さを感じる特別企画。
自然の恵みと人の手によって育つお茶をひと口、目を瞑って、ひと呼吸。
香りや温度、重さや舌触り、空気との触れ合いを経て、目に見える以上の、
その人にとっての「お茶の色」が心に浮かぶ。
一人ひとりの感性によりそう、お茶の多様性。あなたにとって、お茶はどんな色ですか?
2018年、恵比寿と代官山と渋谷のちょうど中間地点にティースタンド[TEA BUCKS]をオープンした大場正樹さん。お店はこの1年余りイレギュラーな営業を余儀なくされましたが、それでも大場さんが淹れるお茶を求めて足を運ぶお客は絶えません。いわゆる“お茶屋さん”とは全く異なる雰囲気を醸し出す[TEA BUCKS]。お茶を媒介に多様な人々が集う場を作り出す大場さんが想いを馳せるお茶の色を聞きました。
鮮やかな緑の茶葉。中には少し丸まった形のものも混じっていて、ダイナミックな印象を受けます。
「あえて『荒茶』をご用意しました」と話す大場さん。「あえて」というのには理由があります。荒茶というのは、農家の工場でつくられ、まだ最終加工されていない、いわば未完成のお茶。もちろん、これにお湯をさせばお茶としていただくことはできますが、私たちが普段手にするお茶(商品)は、こうした荒茶に茶問屋(あるいは農家自身)がもう一手間の仕上げを加えたものなのです。お茶がお茶になるまでの長い道のり。そして、その途中には、普通は味わうことのできないお茶が存在するのでした。
「きれいなお茶になる前の姿というか、農家さんのところでしか味わえないお茶ですね。野性味があるというか、雑味ももちろんあったりするのですが、そこが良かったりもして」
フレッシュに輝いて見えるお茶の色。香味には、青青しさを残した、丸いというよりは直線的な強さを感じます。大場さん曰く、これが「まさに茶工場の香り」。
生産者と気持ちを共有することを大切にしているという大場さん。お客に対しては、「そのお茶がどこの誰がどうやって作っているものなのか」というお話を、自身の体験をベースにリアリティをもって伝えることができるようにしています。
「熊本の富澤さん([お茶の富澤。])のところでお手伝いをさせていただいて、深夜2時3時まで、語り合いながら作ったお茶です。普段は一人で黙々と作業をしているので、僕らが話し相手になってむしろ喜んでもらえたようでした。そういった気持ちもこのお茶の味になっているのかなと」
大場さんのiPhoneには、茶畑から茶工場まで、その時の写真がたくさん残されていました。無造作に書かれた「荒茶」の文字にも、心をほどくような味があります。
「まさしくこの荒茶で蘇ってくるというか。あの気持ちを忘れずにいることで、僕はここでこれからも美味しいお茶が淹れられるんじゃないかなっていう、そういう勇気をいただけるような光景が蘇ってきます」
「お店には若い人もご近所の方も来てくれますし、年齢問わずお茶って愛されるんだなって感じますね。国籍も、もちろん問わず。海外のお客様が来たとき、言葉じゃなくても、お茶っていうツールがあるだけでコミュニケーションが取れるんです」
大場さんにとって、お茶は人とのつながりを象徴するもの。作る人を思って、きっとこうやって作ったんだろうなと想像を巡らせ、お茶を飲みにきた人を見て、きっとこういうお茶を飲みたい気分ではないかと頭を働かせる。一杯の飲み物から人それぞれの時間を思い遣る。そうした大場さんの姿勢が、また[TEA BUCKS]でお茶が飲みたいと足を運ばせる理由かもしれません。
大場正樹|Masaki Oba
1984年生まれ、神奈川県横浜市出身。会社員を辞め、中米・南米・アフリカの旅を経て日本茶の魅力に目覚め、帰国後飲食店の立ち上げなどを経験し、2018年恵比寿西に[TEA BUCKS]をオープン。
instagram.com/tea_bucks
「お茶を面白く、 人をつなぎ、カルチャーに。 Tea Bucks 大場正樹」
Photography: Kisshomaru Shimamura
Text & Edit: Moe Nishiyama & Yoshiki Tatezaki
人それぞれお茶それぞれの多様な「色」を感じることで、
多様性の大切さを感じる特別企画。
自然の恵みと人の手によって育つお茶をひと口、
目を瞑って、ひと呼吸。
香りや温度、重さや舌触り、空気との触れ合いを経て、
目に見える以上の、
その人にとっての「お茶の色」が心に浮かぶ。
一人ひとりの感性によりそう、お茶の多様性。
あなたにとって、お茶はどんな色ですか?
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