• 江頭誠

    アーティスト

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    人それぞれお茶それぞれの多様な「色」を感じることで、多様性の大切さを感じる特別企画。

    自然の恵みと人の手によって育つお茶をひと口、目を瞑って、ひと呼吸。
    香りや温度、重さや舌触り、空気との触れ合いを経て、目に見える以上の、
    その人にとっての「お茶の色」が心に浮かぶ。

    一人ひとりの感性によりそう、お茶の多様性。あなたにとって、お茶はどんな色ですか?

    江頭誠(アーティスト)

    確かな存在感を持って大衆的に普及しながら、時代の変化の中で形骸化してきたものたち。戦後、日本で独自に普及してきたロココ調の花柄毛布やオニキス(大理石)柄の壁紙であらゆる物体、平面、空間を覆い尽くすことで、そこから現れる”物質”のもつ“意味のなさ”やおかしみ、価値観や定義の不確かさを作品として制作するアーティスト・江頭誠さん。「UNMANNED無人駅の芸術祭/大井川」では茶農家さんが身に纏う装身具を制作し、茶畑を練り歩くパフォーマンスを作品として制作するなど茶農家さんとも親交のある江頭さんにとって、日本茶はどのような存在なのでしょうか。日常的にあたり前に行われている“お茶を淹れる・飲む”という行為について思うことや、茶畑でのエピソードなども交えてお話を伺います。

    「日本茶を淹れる時って、向かいに誰かもう1人がいる気がするんです。自分1人のときもあるけど、ほとんどが誰かをもてなしたり、誰かと時間を過ごす時に淹れてるなと。例えば妻や母親、お客さんがいたり。『UNMANNED無人駅の芸術祭/大井川』という芸術祭で、お茶畑を練り歩く作品を作ったんですが、“無人駅の”と謳いつつも、めちゃめちゃおじちゃんたちが濃いんですよね。僕が『抜里駅』の担当だったので、はじめは地域のおじちゃんが週一くらいで集まる集会所で作品の展示をさせてもらって。そこから1年経って、(芸術祭の)2年目はおじちゃんたちが気になってしょうがなかったので、展示をするとかではなく、もうおじちゃんたちのために服を作りたいと。芸術ではなくおじちゃんがメイン。会いにきてもらうきっかけとして作品を作るという感覚でした」

    芸術ではなくおじちゃんがメイン。「UNMANNED無人駅の芸術祭/大井川」ではあらゆる人におじちゃんに会いにきてもらいたいという思いから媒介として作品を制作していたという江頭さん。今回、中でも印象的でキャラの濃いおじちゃんこと白瀧潤一さんの「川根茶」を特別に用意していただきました。

    「白瀧潤一さんとは芸術祭の時からの付き合い。八十八夜に俺が揉み込んだやつなんだ!って一緒にお酒を飲んだ際に熱く語ってくれて。今回電話で送ってもらう時も新茶は摘んだばかりでまだ加工できてないけど、とりあえず古茶があったからサービスしちゃうよってこれ一本送ってもらって。お手紙も入っていたんですが、本文よりもPSの方が長くて、PSが一番その人の本心というか、一番のその人の言葉だったりすると思うんです。だから潤一さんを感じてめちゃ嬉しかったです!あと請求金額もちゃんと書いてあり、仕事人だなぁと。もう僕の親くらいか、もしくは上? いや下かはわからないですが、ロックがすごく好きな方で、話始めると止まらない。アツい人なんですよね」

    お茶を飲む時に思い浮かぶのはおじちゃんたちとのエピソード。特に今でも鮮明に思い出されるのはおじちゃん一人ひとりに作品を身につけてもらい練り歩いた茶畑での光景なのだそうです。

    「(茶農家の)おじちゃんたちに作品を着てもらって、お茶畑を練り歩いた時の光景は自分にとっても印象的で忘れられない光景ですね。みんなめっちゃ元気でファンキー。誰よりもふざけるんですよね。硬派な感じの人かなと思っても、結構おじちゃん同士いじりあったりして、めちゃ楽しそうなんですよ。一緒に(パフォーマンスを)やりましょうとこちらからお願いするというより、まだやんねーのかというスタイルで『江頭さん、今日どうする?』と積極的にお手伝いいただけるので逆に引っ張ってもらいました。とにかくやる気がすごいし面白い。お茶がおじちゃんで霞む。おじちゃんが濃すぎてちょっと。お茶忘れちゃう感じでしたね(笑)」

    白瀧潤一さんの「川根茶」をいただきながら、終始“おじちゃん”話で盛り上がった江頭さんとのお茶時間。日本茶と作品はとてもよく似ていると話してくれた江頭さんの言葉がとても印象に残りました。

    「日本茶も作品に似ているところがあって、さぁこれから時間を共に過ごすぞっていうときに出す、人と人の間を繋いでくれる存在なんじゃないかな。今すぐ会いに行きたいくらいですね(笑)」

    江頭誠|Makoto Egashira
    三重県四日市市生まれ。多摩美術大学美術学部彫刻学科卒業。戦後の日本で独自に普及してきた花柄の毛布を主な作品素材として用いて、大型の立体作品、空間性を活かしたインスタレーション作品を発表する。 発砲スチロール製霊柩車を毛布で装飾した「神宮寺宮型八棟造」が第18回岡本太郎現代芸術賞で特別賞を受賞。空間内に毛布で洋式トイレを造った「お花畑」 は SICF17 でグランプリを受賞。 主な展覧会として、「六甲ミーツ・アート2019 芸術散歩」(神戸市 六甲山、2019)、「六本木アートナイト 2017 」( 六本木ヒルズ、2017) ほか。
    instagram.com/makotoegashira_artwork

    Photography: Kisshomaru Shimamura
    Text & Edit: Moe Nishiyama & Yoshiki Tatezaki

    人それぞれお茶それぞれの多様な「色」を感じることで、
    多様性の大切さを感じる特別企画。
    自然の恵みと人の手によって育つお茶をひと口、
    目を瞑って、ひと呼吸。
    香りや温度、重さや舌触り、空気との触れ合いを経て、
    目に見える以上の、
    その人にとっての「お茶の色」が心に浮かぶ。
    一人ひとりの感性によりそう、お茶の多様性。
    あなたにとって、お茶はどんな色ですか?

    COLOURS BY CHAGOCORO