• 平野紗季子

    フードエッセイスト

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    人それぞれお茶それぞれの多様な「色」を感じることで、多様性の大切さを感じる特別企画。

    自然の恵みと人の手によって育つお茶をひと口、目を瞑って、ひと呼吸。
    香りや温度、重さや舌触り、空気との触れ合いを経て、目に見える以上の、
    その人にとっての「お茶の色」が心に浮かぶ。

    一人ひとりの感性によりそう、お茶の多様性。あなたにとって、お茶はどんな色ですか?

    平野紗季子(フードエッセイスト)

    独自の感性と食への愛情と好奇心からフードエッセイストとして数々の雑誌や連載を執筆、本の出版をする傍ら、菓子ブランド「ノーレーズンサンドイッチ((NO)RAISIN SANDWICH)」をはじめ食のインディーズレーベル「HIRANO FOOD SERVICE」のプロデュースや、イベントの企画など、食文化を中心に多岐にわたる活動を行う平野紗季子さん。幼少期から食日記をつけ続ける生粋のごはん狂を自称する平野さんにとって、“日本茶”はどんな存在なのでしょうか。そもそも平野さんがお茶に興味を持ったきっかけは?

    「私、昔から常温の水が苦手で。子供の頃、常温の水を飲んだ時に、な、なんてつまんないだろう!と思ってしまって(笑)。味が無い、香りが無い、温度が無い。せっかく何かを飲むんだったら、味や香りがついているものを飲みたい……。その欲求が私をお茶に向かわせましたね。冷たいお茶も温かいお茶も大好きです。夏は水出しのお茶をよく飲んでいます」

    そんな平野さんが今回紹介してくれたのは、まるで図書館に並ぶ本のようにお茶からお酒まで古今東西の液体が店頭に並ぶセレクトショップで出会ったという和紅茶。

    「[LIQUID]という古今東西の液体を扱うセレクトショップで知った、沖縄県[金川製茶(かにがわせいちゃ)]の和紅茶です。香りが本当にきれいで、甘みと渋みが絶妙なバランスで同居していて。飲んだ感じもコロコロしていて丸いんです。あるとき、お茶に詳しい方に教えてもらってハッとしたんですが、日本茶って一番茶が最高とされていて、二番茶、三番茶となると、値段もぐっと下がってしまう。でも発酵というプロセスを加えて和紅茶にすることで新たな価値を生むこともできる。買い手にも作り手にも嬉しい循環が生まれるなら、それは素晴らしいことですよね」

    一杯のお茶の価値も捉え方次第。平野さんにとってお茶を飲む時に心に浮かぶ光景は?という質問には意外な回答が。

    「雨が降った日の草や花の匂いが好きなんですが、その風景にお茶を感じることがあります。お茶って、コーン茶や麦茶みたいに、チャノキ以外の植物から作られるものもお茶って言うじゃないですか。ものすごい広い概念だなって。そう考えると自然から香りや味わいを抽出した液体のすべてがお茶のように思えるんです。だとすれば、雨の日に葉や花を伝うしずくだってお茶なんだと思うんですよね」

    茶葉に多様性があるように、味わいや香り、色合いや奥行き、一杯の感じ方も十人十色。雨つゆさえお茶、という平野さんの言葉にはっとさせられたお茶のひとときでした。

    平野紗季子|Sakiko Hirano
    フードエッセイスト。小学生から食日記をつけ続け、大学在学中に日々の食生活を綴ったブログが話題となり文筆活動をスタート。雑誌等で多数連載を持つほか、菓子ブランド「(NO)RAISIN SANDWICH」のプロデュースなど、食を中心とした活動は多岐にわたる。最新作『味な店 完全版』(マガジンハウス)が2021年6月に発刊。
    instagram.com/sakikohirano

    Photography: Kisshomaru Shimamura
    Text & Edit: Moe Nishiyama & Yoshiki Tatezaki

    人それぞれお茶それぞれの多様な「色」を感じることで、
    多様性の大切さを感じる特別企画。
    自然の恵みと人の手によって育つお茶をひと口、
    目を瞑って、ひと呼吸。
    香りや温度、重さや舌触り、空気との触れ合いを経て、
    目に見える以上の、
    その人にとっての「お茶の色」が心に浮かぶ。
    一人ひとりの感性によりそう、お茶の多様性。
    あなたにとって、お茶はどんな色ですか?

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