• 「お茶に対する価値観が変わる体験とは」
    Ocha SURU? Lab. お茶の仕上げ編 Part 6

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    私たちの日常のライフスタイルがたえず変化するなか、
    お茶のあり方はどうだろうか。

    「暮らし」と「お茶」との間に「問い」を立て、
    現代の感覚で私たちなりの「解」を探求する「Ocha SURU? Lab.」。
    その探求の道のりの中で、
    皆さまの日常の中の「お茶する」時間が
    より楽しいものになればという想いとともに、
    CHAGOCORO編集部が総力を挙げて研究を重ねていきます。

    これまでのOcha SURU? Lab.の記事も合わせてお楽しみください。
    シーズン1:Licaxxxさんと一緒に お茶にハマる。 お茶するラボ、始めます。 Ocha SURU? Lab. Part 1
    シーズン2:自分の感覚で選べるお茶とは Ocha SURU? Lab. 一煎パック編 Part 1


    お茶が「お茶」として、私たちの手元に届くまでにある丹念な仕上げ工程を詳しく追ってきたOcha SURU? Lab.のサードシーズン。お茶界の縁の下の力持ち的な存在、製茶問屋のお仕事を間近に体感して、改めて感じたお茶の「価値」や「自由さ」、そして奥深い「楽しさ」。こうした感覚を追体験できるようなプレゼンテーションをするために、どのような形がいいだろう?

    今回のラボの伴走者、鈴木麻季子さんと上田倫史さんとディスカッションをつづける。

    まずは、前回、お手製で仕上げた本茶、茎、粉をそれぞれ抽出していく。
    本茶はいつものお茶、これを基準に。
    粉茶はずっしり。茎茶は軽くて爽やかな印象。
    体験の第一歩目は、自分の感覚で味を言葉にしてみることから。

    鈴木 茎が一番美味しく感じる……。

    上田 茎ね、(取り除いたりするけど)飲むと意外と美味しいんですよね。実はモテるんですよ。意外性でもてはやされるっていうか。

    鈴木 それかもしれないですね。思ったよりも、いいかも、みたいな。

    それぞれ抽出した液体をスプーンですくいながら混ぜ合わせてみる。液体をミックスする、合組のシミュレーション。実際、プロもこうしたやり方でブレンドのイメージを膨らませるのだそう。

    例えば、本茶をスプーン3杯に対して茎を1杯入れるだけで、味の印象はがらっと変わった。

    鈴木 あ、全然違いますね。良い方に変わりましたよ。本茶だけだとけっこう渋みが強いんですけど、茎を1杯入れただけで少しまろやかになる感じです。渋さが柔らかくなるというか。

    上田 この3つだと少し香りが弱いので、例えば多田さん理論で言うと、ここに華やかな香りの品種のお茶をブレンドしたりすると面白くなりそうですね。そういう発想が色々出てきますね。

    鈴木 組み合わせが無限ですよね。

    上田 そう、無限。品種茶「かなやみどり」も淹れてみましょうか。多田さんに教えてもらったノートを見ると……ミルキーな甘い香りがして、渋みがやや強いのが特徴ですね。(淹れたものを混ぜる)バランスが良くなる感じで、レベルがまた高くなった気がしますね。

    鈴木 私はもう少し渋みが出てほしい気がするので……でも粉だと渋くなりすぎるので、本茶を少しと茎を少し入れました。……美味しいです!

    上田 あ、ほんとだ。茎が渋みとかを包んでくれる感じがしますね。全体の潤滑油的な。最初のと比べると格段に香りが違いますね。複雑になった感じがします。

    鈴木 面白いですね。本当に「実験」みたいな感じですね。

    「正解」があるわけではないから、自分の感覚に素直になる。お二人の感じ方にも微妙な違いもあるから、見方が柔軟になる。教科書通りではなく、フラットにお茶と出会い直すような感覚がお二人にも芽生えたよう。

    一通りのブレンドを終えて、最後には[多田製茶]の多田さんが自信を持っておすすめしてくれた煎茶「朝宮」を飲んで、今回の体験を振り返ってもらった。

    鈴木 私、元々渋味が好きだと自分で思っていたんですけど、このお茶は特に渋味がガツンとあるわけじゃないんですけど、美味しいです。十分、味がしっかりしてるって感じる。バランスなんですかね? 何かが際立っているというよりも、思わず美味しいなって思っちゃいました。

    上田 バランスいいですよね。全部がうまく溶け合っているというか。自分たちでブレンドをやったことで、味覚センサーみたいなものが自分で読み取れるようになるというか、味が因数分解された感じかもしれないですね。多分(ブレンド体験を)やる前は、「美味しい」っていう一言だけだったけど、「バランスがいい」っていうのが何となくわかるような。

    鈴木 確かにそうかもしれないですね。この体験をやる前とやった後に同じお茶を飲んで自分の感じ方の変化を知るのも面白いかもしれませんね。つまりこの体験をやる前にプロの方が作ったお茶を飲んでみて、そのときどう思うか。部位ごとの味わいだったり、自分で合組したものの味わいを感じるこの体験をした後に、その上でまた最初のお茶を飲んでみると、また感じ方が違うから、そういう流れも面白いかもしれないですね。

    上田 火入れを自分たちでやってみましたが、炒りたてを飲めるっていうのも、飲み方としてはプレミアムですよね。

    鈴木 荒茶を自分で購入して、そこから選別をするっていう工程は普通できないので、そこも面白いですよね。茎一つひとつ取るのを一人でやるのは大変かもしれないですけど……。

    上田 この体験をやってもらえたら、お茶の味ってもっと広がりがあるんだよっていう気づきがきっとありますよね。それと大袈裟かもしれないですけど、お茶業界の新しい風を感じられるのかもしれないです。多田さんや渥美さん、和田さんなどが、「もっと色々できるはず」って日々お茶の研究をされていて、それは苦労ばかりではなくて、多分楽しんでやられていると思うのですが、それが、飲む人たちにも届くきっかけになるかもしれないですよね。お茶で楽しんでいる姿が伝わると、お茶の可能性も広がっていくのかなと……完全に僕は多田さんに影響を受けたと思っています。

    鈴木 「お茶」って一言で言ったときに多くの方が想像するのって、ひとつの“緑のお茶”じゃないですか。だけど、実際には色んな種類があって、その組み合わせも無限に広がっていて。美味しいという一言にしても、いろんな美味しいがある。品種とか火入れの仕方、ブレンドの仕方とかで味わい方が広がるって知ることで、興味が湧いてくるのかなと感じました。自分で合組してみるっていう体験自体楽しいと思いますし、それだけじゃなくて、お茶に対するイメージだったり、価値観が変わるんじゃないかと思います。

    6回にわたって掘り下げてきた「お茶はどのようにして私たちの手元に届くのか」という問い。お茶をより美味しくより美しく仕上げるための目に見えぬ努力と、味づくりへのこだわり。そして何より、お茶をより深く自由に楽しむ可能性が広がっていることを私たちも学ばせていただいた。

    こうした体験を多くの方に共感していただくために、Ocha SURU? Lab.ではプロダクト開発にも着手しているので、ぜひお楽しみに。

    Photo: Eisuke Asaoka
    Text: Yoshiki Tatezaki
    Produce: Kakuno Kenichi (Itoen)

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